2013年6月

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 本種は以前はなぜか採集が難しいと思われていました。しかし近年では、平地のライトトラップでさえ良い時期・良い場所・良い条件の日に当たれば、かなりの確率で採集でき、また同様の条件の時に高所にバナトラやライトセットを持ち込めば、ほぼ確実に採集できるようになってきました。
 昨年、偶然にヒゲナガゾウムシ狙いのライトトラップに17頭の本種が集まりました。今年は本種の生息環境のあたりがついていましたので、本種狙いで臨みました。結果は実働20日で42頭、日平均2.1頭というマルバネよりも厳しい数字です。ただ、理由は簡単で、あまりにも発生初期過ぎて出てきた個体を順番に採集していたからだと考えています。採集個体も1頭だけ爪の部分欠け個体がいましたが、その他はとても綺麗なピカピカの完品個体でした。6~7月に高所にバナトラを持ち込めば簡単に大量採集できるとは思いますが、私の嫌う不完品率が高まるので、その時期にはやるつもりはありません。
 本種の採集数は今後どんどん増えていき、値段もどんどん下がって行くことが予想されます。もはや珍品ではなくなってきているので仕方ありません。大型美個体標本につきましてはショップで取り扱いますが、小型~普通サイズの標本につきましては「むしオークション」のアイテムの一つとして取り扱う予定です。クワガタ類は、未処理で標本作製までに長期保存が利く虫なので、大部分は未展足で冷凍庫内に放り込んでいます。急いで標本作製が必要な昆虫が無くなるオフシーズンまでは時間がとれませんので、出品サイクルは不定期になります。とても安く出しますので時々オークションをご覧になってください。少数だけ生かしておいた生き虫につきましてはヤフオク!に出品して行く予定です。

*つい先日、ヤエヤマコクワが安すぎると苦情?を受けました。私のところは西表島まで船で40分足らずで行くことができ、虫自体も狙って採れる様になったので、特別高く売る理由が見つかりません。希少性だけが唯一の魅力だった虫のその希少性が失われた今、安くなるのは仕方ありません。西表在住の虫屋さんはクワガタ屋さんでなくても採っていますし、短期で訪れた虫屋さんは特に狙っていなくてもライトトラップを使われた方の2割ぐらいの方はヤエヤマコクワを採集されているような状況ですから。
ヤエヤマキボシハナノミ
 本種は大型美麗種で八重山のハナノミ類の中では最も注目される種かもしれません。ホストは海岸林に多いオオハマボウが知られていますが、原生林内でも良く見られることからその他のホストがあるようです。本種は石垣島では個体数が多く、また走光性も持つためライトトラップで容易に採集でき西表島では特に採集していませんでした。最終日に西表島の海岸線を流していたら、一つの花に本種が沢山群がっているのを見つけました。一掬いで10頭、西表島にも本種は沢山いるようです。
ルリゴキブリ
 ルリゴキブリの仲間は日本では鹿児島県宇治群島から沖縄県与那国島(沖縄本島は除く)まで広く分布しています。ルリゴキブリとして記載されているのは石垣島産および西表島産のみで、他の地域のものは未記載で名前がありません。♂の個体は瑠璃色の綺麗な上翅に奄美・徳之島産は3つのオレンジの紋を持ち、石垣島産および西表島産は無紋、与那国島産はオレンジの横帯を持っているのが普通です。オレンジの紋を持つ個体はサビモンルリゴキブリとして和名が一人歩きしているようです(笑)。
 今回の西表島採集で1♂のみですが、与那国島産と同様のオレンジの横帯を持つ個体を採集しました。もう10年以上西表島に通っていますが初めての採集です。ただ、特にルリゴキブリを狙って採集したことはなく、おそらく20頭程度しか採集していませんので、もしかしたらこのような個体はたくさんいるのかもしれませんが、今回の採集行で驚かされた個体の一つです。ただ、小さな西表島に2種のルリゴキブリが同所的に分布するのはなかなか考えにくいので、少なくとも与那国島産と石垣・西表島産は交尾器等に明確な差が見られないなら、別種にするのは無理があるのかもしれません。与那国島で無紋のルリゴキブリを探す楽しみが増えました。