2014年3月

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最近の昆虫採集禁止の流れでしょうか?
石垣島でも「石垣市自然環境保全基本方針」というものが出されていて、
一部の偏狭な方の動きで於茂登岳全面採集禁止という動きがあるようです。
本当に保護が必要な種がいて、保護方策も検討されていて種を限定しての保護でしたら大賛成ですが、山ごと採集禁止にしても山だけ残り希少種絶滅の道をたどりそうです。

私は有名産地である於茂登岳は採集者が多いのであまり行きませんが、他県から楽しみに採集に来られる方には残念なことかもしれません。

以下、私が提出したパブコメを記録として載せておきます。

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ご担当者様

私、応用昆虫学者を20年間やっていた経験があり、石垣島に15年以上住んでいますので石垣島の昆虫の専門家として昆虫の保護に関してのみ意見を述べさせて頂きたいと思います。まず初めに保護すべき昆虫種の元になっている琉球列島産昆虫目録増補改訂版ですが、出版されたのが2002年で10年以上前の資料です。その資料を作成する基になる資料はそれ以前に発表されたものになるので実際には15年ぐらい前の情報が元になっています。その中には3275種が石垣島に存在することになっていますが、その後現在までに新種や新記録種として300種程度が追加されています。種の重要度として昔からその存在がわかっている3275種よりも、最近になってやっとその存在が明らかになってきた300種の方が重要である事は専門家でなくても察することが出来ると思います。この重要度の高い新たに見いだされた昆虫種について全く検討されていないのは、今回の稀少な野生動植物種の選定における昆虫種についての選定に全く現実味がない無意味なものといわざるを得ません。もしまじめに昆虫種の保護等を検討するのであれば、今現在の状況をちゃんと調査して本当に保護するべき種は何か、その種を保護するには何が必要かを把握することから始めなければ意味がありません。例えば於茂登岳を丸ごと採集禁止にしても、入山禁止ではないので皆さんが登るために登山道が必要で、その登山道は最近は天災で作っては崩落、作って崩落を繰り返しています。昆虫は集中分布をしていることが多いので、たまたま登山道を通した場所に希少種が集中分布している場所が重なった場合、その種を簡単に絶滅に追い込むことが出来ます。登山道を造るために間伐をする-間伐のために風の通りが良くなり周辺が乾燥する-乾燥化が進み環境変化により希少種が棲めなくなる-希少種の個体数減少ということが簡単に起こります。この時に保護すべき希少種の種類、保護に必要な方策が事前に十分に検討されていれば、登山道を通す場所も考慮され、山全体を保護して種を絶滅させてしまうという悲劇は回避されると思います。

それから、環境省レッドリスト、沖縄県レッドデータブックによる選定基準は古すぎて現状を把握していない物が多々ありますし、それらに指摘されていない種で絶滅の危機に瀕している種もいくつかあります。それからなぜか外来種として特記してあるサカイシロテンハナムグリについてですが、15年以上も前から石垣島に侵入定着しており特に個体数が増加する傾向も認められない低密度の種ですので、現状では全く警戒の必要性はありません。今回の自然環境保全基本方針の策定には石垣島の昆虫の現状をおわかりになる方は参加されていないようですね。

長くなってしまいましたので、現状を把握せずに古い資料のみ基づいて行政が引き起こした最近与那国島で起こった悲劇の例をあげて終わりにしたいと思います。数年前にSさんという方が与那国島のヨナグニマルバネクワガタが絶滅の危機に瀕しているという報告を出しました。10年ぐらい前の地元のクワガタを採集して商売をしている方の採集記録が資料の元になっていました。Sさんはご自分では全く調査を行わずに、科学的根拠の全くない古い資料だけを頼りに報告してしまったのです。与那国島にはヨナグニマルバネクワガタが生息する山が4つありますが、その一つで与那国町が大規模な公園開発を行いました。とても不運な事にその場所がマルバネクワガタが集中分布していた場所と重なってしまい、地元の採集人の採集記録のように絶滅に近い状況に追い込まれました。しかしその他の場所ではとても沢山の個体が豊産していました。しかし、その報告だけが一人歩きしてしまい、ヨナグニマルバネクワガタは種の保存法指定種になってしまいました。地元では全く調査がされなかったために保護する必要がない種が保護種になってしまった悪例です。現地での現状の調査が全くなされなかったために悲劇はさらに続いて、ヨナグニマルバネクワガタが現在最も沢山生息している場所が、与那国島への自衛隊施設の誘致の候補地になっています。現在は沢山生息しているヨナグニマルバネクワガタですが本当の意味での希少種、もしくは絶滅種になってしまいそうです。

このように、今現在の正確な状況把握なしに策定された保護方策は何の意味もありません。調査等を行った上で科学的根拠に基づいた保護方策の策定をお願いいたします。

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