ヤエヤマノコギリクワガタの悲しい未来

ヤエヤマノコギリクワガタはご存じのように石垣市自然環境保全条例で保全種に指定され2015年5月から採集が禁止されました。条例が施行された頃は普通種である本種を指定するのは意味が無いのではと楽観視していました。ところが条例が施行された2015年も今年2016年も急速にその個体数が減少しているような状況です。採集が出来ないので正確なモニタリングは出来ていませんが、発生期に海岸線の灯火に集まっている本種の数が著しく減っている様に感じています。
 これからは私の仮説ですが、近年の海岸線周辺の集中的な開発が本種の生息を脅かすレベルに達してしまったのではと考えています。本種の生息域が安定している条件下では、ある狭いエリアが伐採等で開発された場合、そこで一時的に個体数が増す現象が数年前まではしばしば観察されていました。伐採された木や地中の根部が本種が繁殖するための資源となっていたためです。しかし、ここ数年は開発のエリアが海岸線周辺に集中し、本種の生息に致命的なダメージを与えているようで、開発が行われても本種が増える現象が見られなくなってきています。海岸線の低地にまとまっていた生息域が、開発でズタズタに寸断されてしまい個体数が急速に減少してきている状況と想像しています。
 石垣島は小さい島なので、すでに主だった山には舗装された不必要に綺麗な林道が作られていて、山間部には開発の余地はあまりありません。そうなると海岸線が開発のターゲットになります。海岸線の道路沿い周辺は本種の主な生息エリアになっていますが、観光客目当ての店や、移住者の住む家がどんどん出来ていて、さらに最近は私には全くその意味が分からないのですがカーブを減らすための道路直線化の工事が各地で行われています。石垣島には規模の小さな土建屋さんが沢山あって、どこかしら開発をしなければその雇用を維持できない等の理由があるのでしょうが、本種の生息を脅かす潜在的な数千・数万頭レベルの個体数を減少させる行為を、全く規制すること無く野放しにして、昆虫愛好家の方が僅か数匹を採集する行為を条例で規制するというのは全く理解できないし、現状は条例を作っただけで全く保護になっていません。
 石垣市自然環境保全条例は石垣市の環境課によって作られたのですが、ここの職員の方は少し頭が弱いようで、未だに熱心にいもしない密猟者対策の会議をして時間を浪費しています。本種に関しては、個体数の減少の原因は99.9%が海岸線の開発にあります。税金泥棒としか思えないような無駄な時間を過ごさないで、本種の保護に一番大切な海岸線の開発規制の議論を行って欲しいものです。石垣島のヤエヤマノコギリクワガタは、保全種に指定はされましたが、本来行われるべき定期的なモニタリングさえもなされていません。このままでは気づかない間に近い将来には絶滅してしまうかもしれません。
 石垣市もそうなのですが、全国的に昆虫愛好家に対して採集規制の条例を作ることが自然保護活動であるという風潮があるように感じています。でもほとんどが条例を作ったら作りっぱなしで、何の対策も行われていないのが実情です。条例さえ作ってしまえば、勝手に自然保護が行われると思っているのでしょうかね?もう少しまじめにやって欲しいものです。